車をぶつけられた話


8 月 24 日、深夜 1 時過ぎ、インターホンは突然なった。

私はドアアイを覗くと、そこには一人の男性が立っていた。

恐る恐るドアを半分だけ開けると、彼は慌てた様子で
「夜分遅くにすみません。」と話しかけてきた。

私は「はい。」と受け答えると、車の色とナンバーの話になった。
それはまさに私の車で間違いない内容だった。

私はこの時確信した。 ぶつけられたな… と。

すると案の定、「車でぶつけてしまったので、確認して欲しいです。」という内容の話だった。

私はスマホと財布、車の鍵を手に取り、彼とともに駐車場に向かった。車に近づき見ると、運転席側のフロント部分が割れていた。

どうやら、友達を迎えに来て、転回しようとバックした際に、駐車していた私の車のフロント部分にぶつけたようだ。

私は「対処法が分からないので、とりあえず 110 番しますね。」と伝え、電話をかけた。これは高校の時の学びが生きた行動だった。

私の母校は自転車や原付で通う生徒が多かった。朝課外があり、登校する時間帯が早いというのもあり、登校時に自転車や原付の事故が多かった。

そのため、集会で先生から 「事故を起こしたら、自己判断せず 110 番しなさい。」 という話があった。

私は当時、親に送迎してもらっていたため、直接的に関係のない話だったが、この言葉が頭をよぎり、行動に移すことができた。

私は生まれて初めて 110 番に電話をかけた。事故か事件か、怪我はあるかないか、相手はいるかいないか、場所や名前を聞かれ、全て答えると警察につなぐということを言われた。

警察が来るまで体感で 10 分ほどあった。私と彼は、私の車の前で警察が来るのを立って待っていた。

私は彼の名前や年齢、連絡先を聞いた。彼はしっかり答えてくれたので安心した。

私は一つ疑問があった。それは 『なぜ彼は私の家がわかったのか?』 だ。

私は彼に聞くと、一部屋一部屋訪ねたということだった。

私は思わず、「よくその行動ができましたね、感心します。」と伝えた。
というのも、私の部屋は 5 階にあるからだ。時間帯も時間帯。ただでさえ動揺している状況で、5 階までの部屋のインターホンを鳴らし回るのは心身共に大変なことだろう。

事故を起こしても逃げないというのは当たり前のことではあるが、もし私が彼の立場だった時、どのような行動をしていたかは想像がつかない。彼の行動が正しかったかは分からないが、逃げずに行動したことは素晴らしいことだと思う。

それから一時、無言の時間が流れた。すると彼が、免許証を取りに車に行ってもいいかと聞いてきたため了承した。

そう言えば、ぶつけた彼の車を見ていないと思い、私もついて行くと、同じ駐車場の少し離れたところに停めてあった。私はすぐにナンバープレートを見て、番号を控えた。すると彼の車は私と同じく鹿児島ナンバーだった。

無言の空気感も耐え難かったため、私は「鹿児島出身ですか?」と質問した。
どうやら彼は私と同じく鹿児島出身だった。

次は彼から鹿児島のどこ出身か聞かれたため、答えると「野球をやっていたので、知っています。」と言われた。

私も野球をやっていたため、彼の出身校を聞いた。すると、私たちが延長 13 回の激闘の末、競り勝った、思い入れのある高校だった。

彼は 1 個上だったので、当時戦ってはいなかったが、野球の話で会話が続いた。

そうしているうちに、パトカーが来て警官 2 人が降りてきた。するとマンツーマンで事情聴取にあたった。私に対応してくださった警官は、本当に優しく丁寧な対応で、私が今後どのような行動をすればいいかなど、事細かに教えてもらった。

全ての対応が終わり、パトカーは去っていった。私と彼は、後日保険会社に連絡して、双方で対処するということで話をまとめた。

私は、事故を起こして動揺している中での運転は危険だと思い、最後に「落ち着いて、気をつけて帰ってください。」と伝えた。

すると彼は「はい。本当に申し訳ありませんでした。」と言った。
私は何故か 「ありがとう。」 という意味不明な言葉を残し、階段を登った。

階段を登りながら、ぶつけられたのにありがとうって何だと思い、鼻で笑った。

私も初めての経験ばかりで動揺していたんだなと気づいた。振り返ってみると、私の対応はある程度うまくいったのではないだろうか。

1 番よかったのは、すぐに 110 番できたことだと思う。学んだことを行動に移すことができてよかった。

早いうちに、親や保険会社と相談して、対処していこうと思う。

張り詰めた空気感を演出したかったので、いつもと違う表現にしてみました(笑)。

私はいたって元気なので、ご心配なく。